【店舗専門】不動産屋が語る店舗を開業するタイミングは?
こんにちは土井(@takeshidoi73)です。
店舗専門の不動産事業と、リフォームリノベーション事業を行っております。
よく「お店を出すならいつが良いですか?」という質問をいただきます。
実はこの問いに、たった一言で答えられる魔法のような日付はありません。
でも、不動産の現場でたくさんのお店が生まれる瞬間、そして残念ながら消えていく瞬間を見てきた私たちだからこそお伝えできるタイミングがあり、もっと大切なことがあります。
また、当社は不動産事業者であって、工務店でもあるので一貫して工事をしていることもあって年がら年中店舗と向き合っています。
こういった背景も踏まえて、店舗を開業するタイミングについて解説していきます。
1.カレンダーの数字よりも「準備の3ヶ月」を意識する
まず、一番最初にお伝えしたいのが、皆さんが思っている以上に「お店ができるまでには時間がかかる」ということです。
例えば、あなたが「春になって暖かくなってきた4月に、公園の近くでカフェをオープンしたいな」と考えたとします。そうすると、多くの方は1月や2月くらいから物件を探し始めればいいかな、と思いがちです。しかし、不動産屋の感覚からすると、それではかなりギリギリ、あるいは間に合わない可能性が高いです。
お店を出すには、大きく分けて3つのステップがあります。 一つ目は、物件を見つけて契約するまでの期間。 二つ目は、内装のデザインを考えて、実際に工事をする期間。 三つ目は、スタッフを募集して研修をし、プレオープンをして準備を整える期間。
この工程を一つずつ丁寧に進めていくと、どんなにスムーズにいっても3ヶ月、こだわりが強ければ半年くらいはあっという間に過ぎてしまいます。つまり、4月にオープンしたいなら、前年の秋か冬の入り口には、もう場所を決めて動き出していないといけないのです。
「いつ開業するか」を考えるときは、自分がオープンしたい理想の日から、最低でも3ヶ月、できれば半年を逆算してみてください。この「逆算のスケジュール」が頭に入ったとき、あなたにとっての開業までのカウントダウンが本当に始まります。
2.居抜き物件が「正解」とは限らない理由
最近は「居抜き物件」という言葉も一般的になりました。前のオーナーさんが使っていた厨房機器やカウンター、エアコンなどがそのまま残っている物件のことですね。初期費用を安く抑えられる魔法のような選択肢に見えるかもしれません。でも、ここで少し立ち止まって考えてほしいのです。
店舗専門の不動産屋として、多くの居抜き物件を仲介してきましたが、実は「居抜きだからこそ苦労する」というケースも少なくありません。
まず考えてみてください。なぜ前のオーナーさんは、その設備を残して店を閉めたのでしょうか。もちろん「移転のため」という前向きな理由もありますが、多くは「思うように売り上げが上がらなかった」という現実があります。 そのままのレイアウトで店を始めてしまうと、前のお店のイメージを引きずってしまうことがあります。近所の人から「ああ、あそこは前も飲食店だったけど、また変わったのね」と、最初からネガティブな色眼鏡で見られてしまうリスクがあるのです。
また、設備の問題もあります。見た目は綺麗でも、いざ冷蔵庫を回してみたら変な音がする、排水管が詰まりやすくなっている、といったトラブルは居抜き物件の「あるある」です。結局、修理代や買い替え費用がかさんで、新品で揃えるのと変わらない金額になってしまったという笑えない話もよくあります。
さらに、一番大切なのは「あなたのやりたいこと」がその箱に収まるかどうかです。 「本当はもっと開放的なキッチンにしたかったけれど、居抜きだから仕方ない」 「本当はお客さんの顔がよく見えるカウンターが良かったけれど、元々あるからこれを使おう」 そんな風に、自分の理想を少しずつ妥協してスタートしたお店は、どこかちぐはぐな空気感になってしまいます。
もちろん、自分のやりたいことと、残っている設備が奇跡的にマッチすれば最高のタイミングと言えます。でも、「安いから」という理由だけで居抜きを選ぶのは、長い目で見ると開業のタイミングを間違えてしまう原因になりかねません。
何もない「スケルトン」の状態から、自分の手で一つずつ作り上げていく時間は、お店への愛着を育て、後々の使い勝手の良さを生んでくれます。どちらが良い悪いではなく、「自分の理想を叶えるにはどちらの形がふさわしいか」を冷静に見極める目を持ってください。
3.景気が悪いときこそ「いい場所」に出会える
「今はニュースでも景気が悪いって言っているし、もうちょっと世の中が明るくなってからにしようかな」 そう考えるのは、とても自然なことです。自分のお金を使って勝負をするわけですから、慎重になるのは当然です。
でも、不動産の面白いところは、世の中の景気と、良い物件に出会えるタイミングが必ずしも一致しないということです。 むしろ、景気が良くてみんなが浮き足立っているときほど、良い物件は市場に出てきません。
誰もが商売を手放したくないからです。仮に空きが出たとしても、大手のチェーン店が札束を持って並んでいるような状態で、個人の方が太刀打ちするのは至難の業です。
逆に、ちょっと景気が冷え込んでいるときや、街が静かなとき。そんなときに、ふと「代々続いていたような老舗の場所」や「普段なら絶対に空かないような駅前の角地」がポロッと出ることがあります。
周りが足踏みしているときこそ、不動産屋を味方につけて、じっくりと腰を据えて物件を探せるチャンスなんです。
また、不況の時期にオープンしたお店は、コスト意識が非常に高くなります。
派手な宣伝にお金をかけるのではなく、一人ひとりのお客さんを大切にし、どうすれば喜んでもらえるかを必死に考えます。そうして苦しい時期に支えてくれたファンの方は、景気が良くなった後もずっとお店を支えてくれる「宝物」になります。
「いつ」という時期を世間のムードで決めるのではなく、あなた自身が「今なら、この街の人たちに喜んでもらえるサービスができる」という確信を持てたなら、それが世間がいう不況の真っ只中であっても、絶好のタイミングになり得るのです。
4.街の「呼吸」を読んでタイミングを計る
不動産屋としておすすめしたいのが、カレンダーを見るのを一度やめて、自分がお店を出したい「街」を歩き倒すことです。
街には呼吸があります。 例えば、新しく大きなマンションが建設されているエリアなら、その入居が始まる時期が大きなチャンスになります。
何百世帯という新しい住人が一気に増えるわけですから、その人たちが「この街にはどんなお店があるのかな?」とワクワクして歩き出す瞬間に、あなたのお店がそこにあれば、これ以上の宣伝はありません。
あるいは、近くにある大きな会社が移転してくる、新しい駅舎ができる、といったニュースも大切です。 こうした「街が変わるタイミング」に合わせて開業日をぶつけるのは、非常に賢いやり方です。
そのためには、ネットの情報だけでなく、実際にその街の喫茶店に入って近所の人たちの話を聞いたり、古くからある商店主さんと仲良くなって「最近、あそこの空き地はどうなるの?」なんて会話をしたりすることが、どんな不動産サイトよりも確かなタイミングを教えてくれます。
街の変化を味方につける。これは、私たち店舗専門の不動産屋が、プロの視点として常に大切にしていることの一つです。
5.最大の敵は「焦り」というタイミングのズレ
これまで色々なタイミングの話をしてきましたが、実は一番気をつけてほしいのが、自分の中の「焦り」です。
物件探しを始めると、どうしても「早く決めなきゃ」という気持ちになります。特に、いくつか物件を見ていて、他の人に先に取られてしまったりすると、「次に見つけた物件は、何が何でも契約しなきゃ!」と、まるで恋に盲目になったような状態になってしまうことがあります。
でも、思い出してください。お店は始めてからが本番です。 「本当は予算をちょっとオーバーしているけれど、今決めないと後がないから」 「本当は駅から遠くて不安だけれど、居抜きで安く済むからここでいいか」 そんな風に、焦りに背中を押されて決めたタイミングは、往々にして後悔を連れてきます。
私たちは、無理に契約を急かすようなことはしたくありません。なぜなら、あなたがその場所で失敗してしまったら、その物件もまた「空き物件」に戻ってしまうからです。それは、街にとっても、あなたにとっても、そして私たち不動産屋にとっても悲しいことです。
「いいな」と思う物件に出会ったときこそ、一度深呼吸をしてください。 夜のその場所はどうなっていますか? 雨の日の客足はどうでしょうか? その家賃を、お客さんが一人も来ない日が続いても払い続ける覚悟はありますか? その問いに自信を持って「イエス」と言えるまで、時計の針を止める勇気を持ってください。待つことも、立派な開業準備の一つです。
6.「自分自身のタイミング」を整える3つのチェックリスト
最後に、あなたが「今がその時だ!」と決断するために、自分自身に問いかけてみてほしい3つのポイントをまとめました。
一つ目は、「お金の余裕」です。 開業資金だけでなく、オープンしてから半年間、もし一円も利益が出なくても、自分とスタッフが食べていけるだけの貯金はありますか? お金の不安は、あなたの表情を曇らせ、料理やサービスの質を下げてしまいます。心の余裕は、通帳の残高から生まれます。
二つ目は、「コンセプトの太さ」です。 「なぜ、この場所で、この店をやるのか」という問いに対し、誰にでもわかる言葉で熱く語れますか? 街を歩く人に「あ、面白そうなお店だな」と思ってもらうためには、あなたの想いが一本の太い柱のように立っていなければなりません。
三つ目は、「家族や仲間の理解」です。 お店を始めるということは、これまでの生活が一変するということです。休みはなくなり、朝から晩までお店のことを考える日々が続きます。そんなとき、一番近くにいる人が応援してくれているか。これは、長くお店を続けるための「隠れたタイミング」の最重要項目です。
7.おわりに:その一歩を、街は待っています
さて、ここまで長いお話にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。 店舗を開業するタイミング。それは、カレンダーが決めるものでも、景気が決めるものでも、ましてや私たち不動産屋が決めるものでもありません。
あなたが街を愛し、自分のサービスに誇りを持ち、リスクも楽しみも全部引き受ける覚悟ができたとき。そのとき、目の前に現れた物件こそが、あなたにとっての「最高のタイミング」です。
居抜き物件の誘惑に惑わされず、焦りに負けず、街の呼吸を感じながら、あなただけの理想の城を築いてください。 私たちは、あなたがその一歩を踏み出すとき、隣で一緒に考え、一番良い道を探すパートナーでありたいと思っています。
「いつか、自分のお店を持ちたい」 その想いが、具体的な「いつ」に変わるまで、じっくりと時間をかけて準備をしていきましょう。 あなたがお店の鍵を開け、最初のお客さんを「いらっしゃいませ!」と笑顔で迎えるその日を、この街の不動産屋として、心から楽しみに待っています。
ご興味のある方はテナントエージェントまでお問い合わせください。









