【店舗事例】飲食店の居抜き物件を借りた人の体験談

こんにちは、土井(@takeshidoi73)です。
私たちは大阪を中心に、工務店(建築・内装工事)としての高い技術力をベースに、店舗探しから内装工事まで一括して対応ができる店舗専門の不動産事業「TenantAgent」を展開しています。

新しいお店を開くとき、多くの人が真っ先に検討するのが居抜き物件です。
初期投資を低く抑え、スピード開業できる魅力的な選択肢ですが、実際に借りた現場ではどのようなドラマや落とし穴があるのでしょうか。

  • 各種初期費用
  • 内装工事
  • 防災設備
  • 許認可の申請
  • 家具
  • 広告宣伝費


今回は、当社のサポートによって大阪市内で念願の飲食店を開業された新オーナー様のリアルな体験談をベースに、居抜き物件の本当の価値と、工事会社だからこそ見抜けるインフラの本質を、全6章にわたって余すことなくお届けします。

目次

理想の物件を求めて独立開業へ動き出した日

長年、大阪市内の有名レストランでシェフとして腕を磨いてきた大輔さん(仮名)が、自らの城となるビストロカフェを開くために独立を決意したのは、ある年の春のことでした。
料理のクオリティには絶対の自信があり、ターゲットとする顧客層やメニューの構想は完璧に仕上がっていました。

しかし、いざ開業に向けた具体的な資金計画を立て始めたとき、大輔さんは最初の大きな壁にぶつかることになります。
当初は自分の理想のレイアウトをゼロから表現するため、コンクリート剥き出しのスケルトン物件を中心に探していました。

しかし、複数の内装業者から上がってきた工事の見積もりは、どれも予算を遥かにオーバーするものでした。昨今の世界的な建築資材の高騰に加え、人件費の上昇、さらにはガス配管の引き込みや大規模な排気ダクトの設置といった基礎工事だけで、数百万単位の費用が瞬く間に消えていく現実を知ったのです。

また、今建築単価は年々上昇している傾向にあり重飲食を開業しようと思えば最低でも坪単価100万円以上はかかるのが今の内装工事の現状です。
そのため、自己資金と政策金融公庫からの融資を合わせても、スケルトンからの工事を進めれば、オープン後の運転資金がほとんど残らない危険な状況でした。

そこで大輔さんは方針を転換し、厨房機器や基本的な内装が残された居抜き物件に絞って家探しを開始しました。
いくつかの一般的な不動産仲介会社に足を運び、紹介された物件を内覧しましたが、どこへ行っても不動産屋の担当者は「壁紙を変えればすぐ使えますよ」「厨房機器も揃っていてお買い得です」という表面的な説明を繰り返すばかり。

本当にそのエアコンが動くのか、目に見えない配管に問題がないのかといった、大輔さんが一番知りたかった建築的な疑問に答えてくれる担当者には出会えませんでした。
そんな不安の中で出会ったのが、私たち土井工務店が運営するテナント事業部でした。

カフェの居抜き物件で見つけた宝の山と隠れた課題

大輔さんとともに私たちが現地を訪れたのは、大阪市内の主要駅から徒歩5分圏内にある、約12坪の元イタリアンカフェの居抜き物件でした。一見すると、内装は非常におしゃれで、カウンターやテーブル席の配置も大輔さんがイメージしていたビストロカフェの規模感にぴったりでした。

前のオーナーさんが急な事業転換のために退去したとのことで、厨房には導入されてから3年未満のコールドテーブルやガスレンジ、食器洗浄機がそのまま残されており、大輔さんにとってはまさに宝の山のように見えたそうです。

しかし、ここで興奮する大輔さんを横目に、当社の建築査定チームは工事会社の目線でシビアな解剖を開始しました。

一般的な不動産屋なら契約を急がせるために「文句なしの極上物件です」と言う場面ですが、私たちは違います。
厨房の床下に設置されたグリストラップの蓋を開け、排水管の接続クオリティや勾配の角度を確認し、さらに分電盤を開いて現在の契約アンペア数と、ビル全体からこの部屋に引き込まれている電気の「幹線」の太さを徹底的にチェックしました。

そこで、ある一つの隠れた課題が浮き彫りになったのです。
前の店舗は軽食中心のカフェだったため、大輔さんが想定している「強力なオーブンや複数の調理器具をフル稼働させる本格的なビストロ調理」を行うには、現在の電気容量では確実に足りず、営業中にブレーカーが落ちるリスクが極めて高くまたガスの容量も足らないことが厨房の容量計算をすることが判明しました。

また、給湯器の容量も、ディナータイムの大量の皿洗いと調理を同時にこなすにはパワー不足であることも分かりました。
私たちは大輔さんに、残された厨房機器の価値は本物であるとしつつも、電気と給湯のインフラを一部補強する追加工事が必要であることを正直にお伝えし、そのための正確な工事見積もりをその場で算出しました。

工事のプロが家主さんと重ねた条件交渉の裏側

居抜き物件の契約において、売主と買主の合意と同じくらい重要なのが、物件を所有するビルオーナー(家主)様との交渉です。今回の物件の家主様は、過去に別のテナントが勝手な設備変更を行ってビル全体の排水を詰まらせたトラブルを経験しており、居抜きでの引き継ぎに対して非常に慎重な姿勢を持たれていました。

下手をすれば「やはりトラブルが怖いから、一度すべてを取り壊してスケルトンにしてから引き渡してほしい」と言われかねない局面でした。
ここで主導権を握ったのが、工事会社である当社の実績です。私たちは家主様のもとへ赴き、前オーナーさんが施した工事の基礎部分に大きな欠陥がないこと、放置されたまま引き渡されると後々揉める原因になること、そして不足している電気容量と給湯インフラの強化工事は、すべて当社の責任においてビル本体に一切の負荷をかけない安全な工法で施工することを、図面と技術的なデータを交えて論理的に説明しました。

「土井工務店さんが施工管理に入り、インフラの安全性を保証してくれるなら、居抜きでの入居を認めましょう」と、家主様から満面の笑みで承諾を得ることができたのです。

さらに私たちは、前オーナー様との間で、高価な厨房機器やまだ新しいエアコンの「造作譲渡契約」の条件交渉もサポートしました。

一般的な不動産屋では、機器の型番や型式から現在の適正な中古市場価値を算出することができませんが、私たちは日頃からそれらの中古売買や新設工事を行っているため、1円単位での適正価格を提示できます。

結果として、大輔さんにとって非常に有利かつ、前オーナー様にと気が重くなる解体費用を払うより遥かにお得になる絶妙な金額での譲渡が成立しました。

初期投資を劇的に抑えてスタートできた喜び

契約が無事に完了し、私たちはすぐに、事前に大輔さんと約束していたインフラの補強工事と、ビストロカフェとしてのアイデンティティを表現するための部分リフォーム工事に着手しました。

ゼロからお店を作るわけではないため、工事期間はわずか2ヶ月間という内容で、壁紙の一部を落ち着いた木目調に変更し、照明器具を温かみのあるエジソンランプに架け替え、分電盤の主幹容量を本格的な厨房機器に耐えられるレベルへ増設、給湯器をワンランク上の大型モデルへ交換するだけの、無駄を削ぎ落としたピンポイント工事です。

大輔さんが後日、笑顔で語ってくれた経済的なメリットは想像を超えるものでした。もしこのお店をスケルトンから全く同じクオリティで作ろうとしていたら、現在の物価高を考慮すると最低でも800万円以上の内装・設備工事費がかかったはずでした。

しかし、今回の居抜き物件の造作購入費用と、私たちの施した最小限の補強・デザイン工事費を合わせても、総額で約500万円に収めることができたのです。実質的に300万円以上の初期投資を浮かせたことになります。

この浮いた莫大な資金は、オープニング初期の運転資金として手元に厚く残されただけでなく、料理のクオリティをさらに高めるための厳選された食材の仕入れルートの開拓や、ターゲット層に届くSNS広告・WEBサイトの構築といった、集客のためのダイレクトな投資へと回されました。

資金に余裕を持ってオープンを迎えられたことが、大輔さんの精神的な安定にどれほど大きく寄与したかは言うまでもありません。

オープン後に実感した居抜きの強みと事前の目利きの重要性

念願のビストロカフェがオープンを迎えた初日、大輔さんは居抜き物件が持つもう一つの絶大な強みを肌で実感することになりました。前のイタリアンカフェが地域の方々に親しまれていたこともあり、近隣の住民や近くのオフィスに勤める方々が「新しい店ができたんだ」と、何の抵抗もなく次々と暖簾をくぐってくれたのです。

ゼロから新しく作った店であれば、そこに飲食店があること自体を認知してもらうまでに数ヶ月の時間がかかりますが、居抜きの動線は最初から完成していました。

さらに、本格的なディナータイムを迎え、複数のコンロで肉を焼き、大型のオーブンを回し、食器洗浄機を同時に稼働させるという、最もインフラに負荷がかかる時間帯が訪れました。
大輔さんは心の中で「本当にブレーカーは落ちないか、排水は詰まらないか」と一瞬緊張したそうですが、厨房は何のトラブルもなく完璧に機能し続けました。

事前に私たちが電気容量を増設し、給排水管の勾配を確認していたからこその、当然の結果です。
大輔さんは「もし、あの時普通の不動産屋の言う通りに、インフラの確認をせずにそのままオープンしていたら、最初の週末の満席時に間違いなくブレーカーが落ちて営業がストップし、お客様の信頼を一瞬で失っていたと思います。

見た目のデザインだけでなく、お店がプロの現場として24時間正常に動くための心臓部を最初に見極めてくれた土井工務店さんのおかげです」と、深く感動を口にされていました。

お店は初月から目標売上を大きく達成し、今では予約の取れない人気店として、中央区のネオン街に新しい賑わいを
生み出しています。

居抜き物件での店舗開業を成功させるための本質

今回の体験談が示している通り、飲食店の開業における居抜き物件の活用は、間違いなく現在最高のショートカットであり、賢い戦略です。
数百万単位の現金を残し、最短の期間で売上を生み出し始めることができるメリットは、何物にも代えがたい強みです。

しかし、それと同時に、居抜き物件は前に誰かが使っていた中古の建物の構造をそのまま引き継ぐという、目に見えない高いリスクを背負う取引であることも忘れてはなりません。

多くの開業者が、家賃や立地、クロスの綺麗さといった表面的な情報だけで物件を契約し、入居後に「水道が出ない」「ガス容量が足りない」「エアコンが1ヶ月で壊れた」というトラブルに直面し、せっかく浮かせたはずの資金をドブに捨てるような追加工事費用で破産していく悲劇が後を絶ちません。

居抜き物件の本当の取引価値は、契約書の書類を整えることではなく、その物件の中に残されたインフラのバリューとリスクを1円単位で正しく解剖できる、確かな工事技術があって初めて成立するのです。

締め:店舗探しは店舗専門の業者でなければ難易度はもちろん高い

いかがでしたでしょうか?
簡単なように見えてテナント探しというのは内装の建築の知識と不動産の知識の二つの知見が必要です。

この二点を極めている業者は非常に少なく、当社もまた工務店が発祥の不動産会社だからこそできる調査になります。
実際問題、工務店を連れていけばと思う人も多いのですが、店舗専門の工事会社は少なく暇では無いので現地調査に行く暇がありません。

逆に街の工事会社を連れてこれでいける、安く行けると言って大変なことになるケースは多々あります。
店舗の工事は単なる工事ではなく、許認可が降りる工事をする必要があります。

そのために必要なことは何か?それを考えて内装制限をクリアし、必要な設備を用意する必要があります。
非常に難しい問題ではありますが、店舗専門の会社はできているのが当たり前です。
もし、読者の方で改行を考えられている方がございましたら、必ず店舗専門の会社に相談してください。

店舗の開業には、店舗専門の不動産屋と店舗専門の工務店が必須です。
最後になりましたが、皆様の開業がうまく行くことを祈っております。

土井

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この記事を書いた人

株式会社土井工務店 代表取締役。元柔道日本代表。大阪を中心に、店舗専門の工事会社としての施工実績と、不動産事業「TenantAgent」を両輪で牽引。「建築の知識がない者が行う不動産取引は、お客様を大きな危険に晒す」という強い信念のもと、店舗の過酷な設備インフラ査定から、一般住宅の失敗しない物件購入・ワンストップリノベーションまで、お客様の人生の節目を圧倒的な誠実さとスピードでサポートしている。

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